GoogleとTri Alpha Energyが開発した「Optometrist Algorithm」とは?
#一般解説
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Googleと核融合スタートアップのTri Alpha Energyは、核融合実験の効率を高めるための新しい機械学習アルゴリズム「Optometrist Algorithm」を共同開発しました。このアルゴリズムは文字通り「眼科医(オプトメトリスト)」の検査にたとえられます。人間の専門家が2つの実験結果を比較し、より望ましい方を選択することで、膨大なパラメータ空間から良好な解を見つけやすくする仕組みです。
なぜアルゴリズムが必要か?
核融合炉を開発・実験するときは、プラズマの温度や密度、磁場の強さや形状、ビーム入射のタイミングなど、数千ものパラメータが絡み合います。ところが、核融合プラズマの振る舞いは非常に複雑なうえに非線形的で時間変動も大きい。さらに「プラズマが安定しているか」「機器が安全に動いているか」という複数の指標を同時に最大化・最適化しなければなりません。
このようにパラメータが多すぎると、コンピュータの自動探索だけで有効な解を探し出すのは難しく、むしろ危険な(機器の耐性を超えそうな)運転条件にまで勝手に最適化されてしまう恐れがあります。そこで、現場の研究者の知見と機械学習を組み合わせる手法が重要となるのです。
Optometrist Algorithmの仕組み
まず、コンピュータが複数のパラメータセットを生成し、それぞれ実験(またはシミュレーション)を行います。
2つの実験結果を研究者に提示し、「どちらが良いか」を問いかけます。
研究者は「より高いプラズマ温度が得られた」「装置に無理のない状態だった」など総合的に判断し、好ましい方を選択。
アルゴリズムがその選択を反映して次のパラメータを提示し、最適化を繰り返していく。
こうして人間の判断(専門知識や安全基準)を組み込みつつ、自動的に最適パラメータを探索できます。
何ができるようになったのか?
Tri Alpha Energyはこのアルゴリズムを、同社のC-2Uプラズマジェネレーターで用いて、より高温のプラズマをより長時間保持することに成功しました。これは核融合実験で非常に重要な要素です。
温度が高いほど核融合反応を起こしやすい。
プラズマが安定して長時間維持できるほど持続的な核融合に近づく。
Tri Alpha Energyの社長兼CTOであるMichl Binderbauer氏によれば、この成果は「物理研究全体を加速させる大きな可能性がある」とのことです。
従来の核融合炉との違い
Tri Alpha Energyの炉設計
ビーム状のプラズマを容器の中に打ち込み、それを磁場で閉じ込めて回転させるタイプ。粒子加速器に似た方法を応用。
トカマク型(例:ITER)
ドーナツ型トーラスの中で水素系燃料を強力な磁場で閉じ込め、超高温プラズマを作り出す。
Tri Alpha Energyの方式は、ビーム入射や磁気構造の制御など従来と異なるパラメータ空間が広がるため、このようなアルゴリズムによる探索の恩恵がさらに大きいと考えられます。
今後の展望
Tri Alpha Energyはすでに5億ドルの資金を調達しており、新型リアクター「Norman」でもOptometrist Algorithmを活用する予定とのこと。こうした最適化技術は核融合に限らず、他の高度な工学分野や研究開発にも応用できる可能性があります。
人間の創造性や安全性の知見を活かしながら、AIによる大規模データ解析で短期間に最適解を追求する。核融合の研究分野では、こうした「人間とAIのハイブリッド戦略」が今後ますます重要になるでしょう。
以上が、GoogleとTri Alpha Energyが共同開発したOptometrist Algorithmの概要です。核融合炉の研究は依然として膨大な課題を抱えていますが、機械学習と専門家の知見を組み合わせることで、従来より速いペースで物理的・工学的ブレイクスルーが期待されています。
元記事
Google and Tri Alpha Energy Develop an Algorithm to Advance Nuclear Fusion Research | Greentech Media
感想
なんかこれ見てると、民間って物理とかどーでもいいから、ガンガンNNに頼っていって、ブラックボックスのまま小型核融合炉を作る方向の方がうまくいきそうな気がしたmasaharu.icon